「ジェンダークレーマー」という言葉を最近聞くようになりました。
おもに「この表現は女性差別だ」という批判に対して用いられているものです。
ジェンダークレーマーという言葉がなぜ用いられるようになったのか、どんな場面で用いられるのか、経緯や定義についてみていきましょう。
「ジェンダークレーマー」は「ツイフェミ」に代わって用いられるようになった
ジェンダークレーマーという言葉が使われるようになった経緯については、こちらの記事でくわしく書かれています。
従来、さまざまな表現への「それは女性差別だ」という批判は「ツイフェミ」(=ツイッター上のフェミニスト)によるものだといわれていました。
これらの批判は女性差別を助長している、女性を搾取しているといったフェミニズム的な言い方でなされることが多かったためです。
ですが、こうした批判をする人たちが全員フェミニストを自称しているわけはもなく、批判の内容についても本来のフェミニズムからかけ離れている、という指摘も出てきました。
加えて、批判された表現者からすればこれらの批判は「フェミニスト」というよりは「クレーマー」によってなされたものという認識もあり、「ツイフェミ」より「ジェンダークレーマー」という呼称のほうがふさわしいと考えられるようになったのです。
「ジェンダークレーマー」が使いやすい理由
ジェンダークレーマーという言葉が定着しつつあるのには理由があります。
それは、フェミニズム自体を批判したくないという人にとって、この言葉は使いやすいからです。
「ツイフェミ」という呼称だと、これを批判する人は「アンチフェミ」に分類されます。
フェミニズムは男女平等、女性の権利向上を掲げているので、アンチフェミとされた時点で女性を差別する側だという印象を与えかねません。
これに対し、「ジェンダークレーマー」だと、あくまで批判する相手はクレーマーとなります。
フェミニズム自体と対決する必要はなくなるのです。
男女平等自体には賛成しているけれど、理不尽なクレームには対抗したい、と考えている人たちにとっては、「ジェンダークレーマー」は使いやすい呼称になるのです。
フェミニストとジェンダークレーマーは重なることもありますが、同じではありません。
フェミニストでも表現規制に反対する人は存在します。
フェミニストであってもなくても、ジェンダー関連のクレームを入れるなら、その人はジェンダークレーマーということになります。
この言葉の定義は?
ジェンダークレーマーとは、根拠もなくある表現や表現者が女性差別的、差別を助長するなどと決めつけ非難する人を指します。
本当に差別的な表現を差別的と指摘する人はジェンダークレーマーではありません。
問題なのは、ある表現が差別的かそうでないのか、はっきり線引きするのは難しいということです。
下手をすると、まっとうな批判までも「それはジェンダークレームだ」という言い分で抑え込むことにもなりかねません。
ですが逆に、理不尽な言いがかりまでも真摯に耳をかたむけていたら、表現が委縮してしまいます。
この表現は差別的でない、と自信をもって言えるなら、クレームには毅然として対処することも必要になります。
表現を差別的と批判する人が「ジェンダークレーマー」だと認識できるなら、相手を一論客ではなく、クレーマーとして粛々と対処することもできるようになるでしょう。
「何が差別にあたるのか」については慎重な議論が必要ですが、クレーマーが議論に応じることはまずありません。
ジェンダークレーマーという呼び方が定着するかはわかりませんが、対話不能な相手の言い分に耳をかたむける表現者は、今後減っていくと考えられます。
pixiv百科事典にも記載が
ピクシブ百科事典の「クレーマー」の項目でもジェンダークレーマーについてふれられています。
上記の解説では「性区別に関して過剰な言いがかりやイチャモンをつけるジェンダークレーマーも増加傾向にあり」とあり、クレーマーのなかでもジェンダークレーマーの存在感が増しつつあることが問題視されていることがわかります。
ピクシブには絵師がたくさんいて、なかにはクレーマーに炎上させられてしまった人がいるため、このような解説になっているのかもしれません。
イラストはツイッターなどでは拡散されやすく、クレーマーにも目をつけられやすいので、ジェンダークレーマーによる被害にも表現者は敏感になっていると考えられます。