いやこれほんと面白かったですね。

価格は文庫版なら842円、kindle版なら720円。

作者の青崎有吾は「和製エラリー・クイーン」の異名をとる若手ミステリ界の俊英ですが、確かにこれはがちがちの本格ミステリ。

ラノベ風の見かけやキャラにだまされてはいけません。

ここで展開されているのは、しっかりとしたロジックに基づいた、古式ゆかしい犯人当てゲーム。

あの懐かしい「読者への挑戦」も出てきますよ。

この読者への挑戦、私は『孤島パズル』で見て以来です。

デビュー作にして第22回鮎川哲也賞を受賞した快作、さすがの出来栄えです。

 

『体育館の殺人』は文字通り、体育館で何者かによって殺害された放送部部長・朝島友樹を殺害したのは誰なのか?をめぐる推理小説です。

主人公の袴田柚乃は、一度は警察によって犯人にされかけた尊敬する卓球部の先輩・佐川奈緒を救うため、風が丘高校きっての変人である裏染天馬に真犯人を探すよう依頼します。

この裏染天馬、なかなか癖のある男で、決して正義のためには推理しない。しかも部室に住み着いているという変人。

彼が動くのはお金のためです。

しかも重度のアニメオタクで、隙あらばアニメの台詞を繰り出してきて、アニメ知識のない周囲のものを戸惑わせる。

発売されたのが2012年なので出てくるネタが魔法少女まどかマギカ、とらドラ、絶望先生や戯言シリーズなどちょっと古いのですが、別にこれらの知識がなくても読めます。

ネタを知っていればさらに楽しいんですけどね。

そういう意味ではラノベ好きの読者にも楽しめるミステリだと思います。

 

そんな裏染と袴田のコンビが「密室」となった体育館の舞台で行われた殺人の犯人をつきとめていくわけですが、この犯人は……ちょっとわかりませんでしたね。

慎重に読んでいけばわかるんでしょうが、作者の青崎有吾も書いている通り、わざわざ過去ページを読み返して論理的に考え、犯人を当てようとするような読者は今では奇特なものです。

それでもそんな奇特なファン向けに本格ミステリを書く心意気、これこそが本格ミステリの作家ですね。

 

で、このお話、謎解きが完全に終わったかと思いきや、さらにもう一幕あるのです。

これが、謎めいたオープニングに対する答え合わせになっています。

なるほど、この事件にはこういう背景があったのか……と納得させられるのですね。

犯人よりもここで出てくる人物のほうが、さらに意外というか。

事件の全体像が見えることで頭のなかの靄がすっかり晴れる心地よさが味わえますよ。

 

大人になってからあまりミステリを読まなくなったんですが、この『体育館の殺人』を読んで、ミステリって面白いんだな、ということを再確認させられました。

子供のころ、江戸川乱歩を夢中になって読んでいたのを思い出しましたね。

続いて、続編となる『水族館の殺人』も読んでみようと思います!